鹿児島黒の文化
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鹿児島の黒の文化
鹿児島と言えば「黒」・・・きっかけは西洋式軍艦!?
旬彩 佳鈴(しゅんさい かりん)店主の坂元和彦です。
和彦という名前にもかかわらず、皆さん僕のことを「一平さん」と呼んでくださいます。
なぜ僕が「一平」と呼ばれるようになったのか?
その秘密は、ぜひお店にお越しの際に、直接聞いてみてくださいね。
ところで、鹿児島には古くから「黒」というイメージがあるのをご存じでしょうか?
そうしたイメージを持たれるようになったきっかけには諸説あるようですが、僕が一番
気に入っている説はというと…
![鹿児島の黒の文化](/wp-content/uploads/blackculture_img001.jpg)
この写真は、僕の住む鹿児島県のMBC南日本放送・MBCニューズナウという
番組で紹介された1シーン。
番組の「幕末維新ニュース」というコーナーで取り上げられたものなんですが、
慶応3(1867)年8月24日は、日の丸が日本国の船を示す総船印となった記念日
らしいんですね。
詳しくは
https://blogs.mbc.co.jp/bakumatsu/646
つまり、日本人がこのような光景を目にするのは初めてのことだったということ
ですよね。
おそらく、この光景は多くの人々の目に焼き付いたことでしょう。
でも、よく見てみると、日の丸の他に、もうひとつ何かの旗が掲げられています
よね。
この旗のマークは、薩摩藩・藩主 島津家の家紋なんです。
洋式軍艦に日の丸と島津家の家紋の旗…
とてもカッコイイと思いませんか?
黒船来航の時、多くの人が恐れおののいたことかと思いますが、それと同時に
洋式軍艦の形状や壮大さに目を奪われた人も多くいたことでしょう。
そんな洋式軍艦を、ついに日本も造れるようになり、日本の旗が掲げられた…
きっと、そのことを誇りに感じながら、歓喜の思いで目にし、その時の様子は、
多くの人々に語り継がれたことでしょう。
薩摩の黒のイメージとともに…
この光景を目にした人々から、「薩摩藩=黒」というイメージが広まっていっ
て…という説。
僕は、この説がお気に入りの説なんです。
今の時代でも鹿児島のイメージカラーは「黒」なんですが、理由はちょっと違
っています。
実は、今の鹿児島の「黒」のイメージは、料理の食材から来ているんです。
どういうことかというと、鹿児島は、
● 六白黒豚
● 黒毛和牛(鹿児島黒牛)
● 黒さつま地鶏
● 黒糖(黒糖焼酎)
● 黒麹の芋焼酎
● 黒酢
● 黒マグロ
● 黒節(鰹節)
● 黒にんにく
など、「黒」の付く食材の宝庫なんですね。
僕のような料理人にとっては、「黒」の食材で溢れている鹿児島の地は
とてもありがたい場所ですし、他にない料理を生み出せるこの上ない場所
とも言えるんですね。
鹿児島の黒豚は今に始まったブームじゃない!
鹿児島と言えば「黒豚」を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
今や黒豚は鹿児島を代表する食材として、全国区の知名度となっていますよ
ね。
でも、実は戦国時代でもよく豚が食べられていたという記録が残っているほ
ど、豚とは縁がとっても深いのが鹿児島なんです。
出典:創業支援課2期生の集いの場
その鹿児島の地で育てられているのが、「六白(ろっぱく)黒豚」。
鼻と尾、4本の足先の合わせて6ヶ所が白いことから六白黒豚と呼ばれて
います。
「バークシャー種純粋黒豚」というのが正式な呼び方のようですが…
この六白黒豚は、一般的な白豚と比べると、臭みがなく、身が柔らかく、
特に脂身の旨みが人気の秘密となっています。
さらに、サツマイモをエサとして育てられた鹿児島県産の六白黒豚は、
アミノ酸含有量が多く、肉のキメが細かく、脂肪水分量が少ないことから、
味の良さと歯切れの良い食感、脂っぽくなくあさっりと食べられるという
ことで、女性や中高年の方にも人気となっているんですね。
そんな鹿児島県産の六白黒豚。
僕のおススメの食べ方は・・・
ぜひお店でご賞味くださいね♪
鹿児島黒牛が大好きな「黒由紀姫」。その正体は、あのAKB48の・・・
和牛日本一を決める5年に1度の品評会で平成29年に鹿児島黒牛が見事、
全国和牛チャンピオンに輝いたのは記憶に新しいところですが、鹿児島
が和牛の飼養頭数全国一だということは、意外に知られていません。
全国の黒毛和牛飼養頭数約160万頭のうち、鹿児島県は30万頭、約19%
もの割合を占め、堂々の全国第1位なんです。
そんなブランド牛である鹿児島黒牛は、長い年月をかけ、改良に改良を
重ねた結果、キメ細やかな美しい霜降りならではのとろけるような食感
とまろやかなコク・旨み…といった特長が生み出されました。
そして、その鹿児島黒牛を紹介しているのが、鹿児島県出身のアイドル
で、鹿児島県の薩摩大使を務めるAKB48の柏木由紀さんです。
柏木由紀さんが白雪姫ならぬ『黒由紀姫』に扮した鹿児島黒牛の紹介
動画がとってもコミカルで可愛らしいので、おススメですよ!
日本三大地鶏なのに、地元の人も意外と知らない?
日本三大地鶏と言えば、誰でも知ってる愛知県の「名古屋コーチン」
に秋田県の「比内地鶏」。
ここまでは出てくる人が多いんですが、ここ鹿児島で聞いても、もう
ひとつが出てこないんですよねー。
もうひとつは、「薩摩地鶏」なんですけど…
しかも1943年に国から天然記念物に指定された由緒正しい地鶏なんですが…
実はこの薩摩地鶏。江戸時代に薩摩藩で闘鶏用・観賞用に作られた鶏なん
ですね。
鹿児島県は、徳之島という島では闘牛が盛んですし、加治木町というところ
ではコガネグモ同士を戦わせる「加治木くも合戦」といった伝統的な競技も
あります。
徳之島の闘牛は400年以上の歴史がありますし、加治木くも合戦も
1592年(文禄元年)の文禄・慶長の役に際して、島津義弘公が兵士の士気を
高めるために始めたとされていて、長い歴史を刻んでいます。
鹿児島県民は闘争本能が高い!?のかは分かりませんが…
それはさておき、鹿児島黒豚・鹿児島黒牛に続く、第3の“黒”として研究に
6年、出荷までに10年を費やし開発されたのが「黒さつま鶏」なんです。
![](/wp-content/uploads/blackculture_img004-248x300.jpg)
黒さつま鶏は、闘鶏用だった薩摩地鶏に、横斑プリマスロックという、
鹿児島では“ごいし”の愛称で親しまれてきた在来種の地鶏を掛け合わせて
できた新しい品種で、鹿児島の「新たなる黒」として注目されているん
です。
黒さつま鶏の特長は、食べるとプリプリと歯切れ良い適度な歯ごたえと柔ら
かな肉質のバランス。
そして、地鶏としては脂の乗りが良く、旨み成分であるアミノ酸が豊富に含
まれているため、噛むとジューシーな肉汁と旨味が口いっぱいに広がるとい
うことから、「他の地鶏にはない食感」と好評を得ているんですね。
黒さつま鶏の特長を活かしたおススメの食べ方としては、しゃぶしゃぶや
すき焼き、炭火焼、唐揚げ、串焼きなどはもちろんですが、やはり鹿児島と
言えば『鶏飯(けいはん)』がオススメです。
鶏飯は、鹿児島県の奄美地方で古くから食べられている郷土料理で、蒸し鶏
や甘辛く煮たシイタケ、錦糸卵、パパイヤの漬物などの具材とのり、ねぎ、
島みかんの皮などの薬味をご飯の上に乗せ、鶏がらスープをかけて食べる料理
で、お酒を飲んだ後などに食べると、さっぱりして、やみつきになりますよ!
お菓子にも焼酎にもなる黒●●って?
その奄美地方で生産が盛んなのが、黒砂糖。
その黒砂糖を原料に醸造し、単式蒸留した本格焼酎が黒糖焼酎なんで
すね。
黒砂糖というと料理に使ったりというイメージがあると思いますが、ここ
鹿児島では、黒砂糖は塊のまま、おやつやお茶請けとして食べたりします。
そして黒糖焼酎は、日本で唯一、奄美群島だけで造られている希少な焼酎
になります。
黒糖焼酎の特長は、焼酎臭さが少なく、黒糖によるほんのりとした甘い味わ
いを感じるところ。
同じサトウキビを原料とした蒸留酒であるラムと似ていることもあり、焼酎
の中では一番洋酒に近い味なので、洋酒好きな方は一度試してみるといいかも。
鹿児島でもよく飲まれているのは、奄美大島開運酒造さんの『れんと』。
黒糖焼酎の中では知名度が高く、とても飲みやすく、香りも華やかで女性の
方にもオススメです。
![鹿児島の黒の文化](/wp-content/uploads/blackculture_img005.jpg)
全国で唯一!焼酎学が学べるのは鹿児島だけ!
3年連続で宮崎県が焼酎出荷量で日本一となっていて、鹿児島県民としては
苦々しい思いをしているわけですが、実際のところ宮崎県に負けていると
いうよりは、霧島酒造さん、ただ1社に負けているだけなんですね。
それでも鹿児島県民としては、焼酎と言えば、鹿児島県!と言いたい
わけです。
というのも、日本全国の中で、焼酎学を学べる大学は、鹿児島大学
農学部ただひとつだけなんですから。
それだけ、鹿児島県の焼酎に対する思い入れは強いんですね。
そんな芋焼酎ですが、黒麹・白麹・黄麹の3タイプに分かれているんです。
黄麹は日本酒造りに使用されますが、芋焼酎では少ししか使われておらず、
黒麹か白麹が主流となっています。
黒麹の芋焼酎は、重厚な味わいで、辛口になる傾向があり、力強く
キレがあるのが特長です。
鹿児島で良く飲まれている黒麹の芋焼酎は、何といっても大口酒造さんの
「黒伊佐錦」。
焼酎が苦手な方でも飲みやすい焼酎だと思います。
全国的に有名なのは西酒造さんの「天使の誘惑」でしょう。
そして、僕のオススメは、村尾酒造さんの「村尾」と佐藤酒造さんの
「佐藤の黒」。
本坊酒造さんの「錫釜(すずかま)」あたりですね。
それから、今年は特にあともうひとつオススメしたい焼酎があります。
それは、大河ドラマ・西郷どんにこれから出てくるキャラクターで、僕の
大好きな薩摩藩家老・小松帯刀(たてわき)の名前を取った、吹上焼酎
さんの「小松帯刀」。
![鹿児島の黒の文化](/wp-content/uploads/blackculture_img006.jpg)
西郷どんとともに、これから注目してほしい焼酎ですね。
一方、白麹の芋焼酎は、黒麹に比べ、香り・味ともに穏やかで、優しい
口当たりで、芋らしい甘みもありつつ、スッキリした飲み口で、穏やかでマイ
ルドな味わいが特長になっています。
鹿児島で良く飲まれていて、かつ僕も大好きな白麹の芋焼酎と言えば、三岳
酒造さんの「三岳」です。
全国的に有名なのは、森伊蔵酒造さんの「森伊蔵」ですよね。
その他、焼酎のラベルが可愛らしい大口酒造さんの「伊佐小町」や若潮酒造
さんの「樵」や「千亀女」、宇都酒造さんの「金峰」「天文館」なども
おススメですね。
ですが、近年では黒麹の芋焼酎がかなり人気ですので、ぜひ「黒○○」とか
「○○黒」という名前になっている芋焼酎を試してみてほしいですね。
まさに絶景!黒○を育てる亀壺畑!
鹿児島県の霧島市福山町というところは黒酢づくりで全国的にも有名なとこ
ろです。
こんな光景をテレビで目にしたことがあるのではないでしょうか?
![鹿児島の黒の文化](/wp-content/uploads/blackculture_img007.jpg)
この写真は、坂元醸造さんの公式ホームページに掲載されている写真ですが、
残念ながら、僕(坂元和彦)とは親戚でも何でもありませんので、あしからず…
なぜ黒酢が鹿児島なのか…
ここでもやっぱり薩摩藩が関わっています。
大河ドラマ・西郷どんの最初の頃、薩摩藩が大借金を抱えていて、
藩の財政は破綻しそうだったというエピソードがあったと思います。
借金の額は500万両。現在の金額にすると、実に2,500億円もの借金です。
その藩の財政改革を任されたのが、西郷どんでは俳優の竜雷太さんが演じた
薩摩藩家老・調所広郷(ずしょひろさと)という人物です。
調所の財政改革の中に藩の物産品の貿易拡大などがあり、物産開発の中に黒酢
も含まれていたと考えられているようです。
当時の福山の港は、重要な物流基地として栄えていたようで、各地の物産品や
上質な米も集まってきていたこと。
また、福山の土地はシラスの土壌でろ過されたまろやかで美味しい湧き水が
あったことから、黒酢づくりに欠かせない原料が揃っていたこと。
さらに、薩摩藩は、焼き物造りに力を入れていましたので、薩摩焼の壺も手に
入ったことから黒酢造りには最適な環境だったと言えます。
そうしたことから、福山の地で黒酢づくりが盛んになっていったんですね。
日本人が大好きな●●●の養殖日本一!
日本人だけでなく、今や世界中の人が大好物と答えるのが、マグロですよね。
そんなマグロの中でも、マグロの王様と呼ばれているのが
黒マグロ(本マグロ)です。
お寿司屋さんなどで出される高級マグロの代表で、一般のスーパーの魚売場など
ではあまり扱われていません。
毎年恒例の築地の初競りで、某すしチェーンの代表が1億数千万円で落札したと
いうニュースをご覧になったことがあるのではないでしょうか。
そんな黒マグロが日本で養殖されているのをご存じでしょうか?
実は、鹿児島県の奄美大島にある 瀬戸内町というところは、黒マグロの
養殖で日本一なんです!
あの行列の絶えない「近大マグロ」のふるさと…と言えば納得していただけ
るのでは?
そうなんです。
瀬戸内町には、近大マグロで知られる近畿大学の研究施設があるんですね。
ここでは世界で初めて黒マグロを卵から完全養殖の実用化に成功したことで知
られています。
全身ほぼトロとも言われる超高級魚の黒マグロは、口に入れた瞬間にトロトロ
な食感で、高い人気となっています。
このように、鹿児島県は「黒の食材」を数多く生み出している「黒の文化」の
地だということがお分かりいただけたでしょうか。
日本でも珍しい「黒の食材」を活かした料理の数々を堪能しに、また「黒の食材」
の産地を巡りに、ぜひ鹿児島を旅してみてはいかがでしょうか。
そして、地元鹿児島のお客さんと黒麹の芋焼酎で一献傾けながら、
『鹿児島の隠れ家的小料理屋』旬彩 佳鈴(しゅんさい かりん)
で旅の思い出を語り明かしてみてはいかがでしょう。